慣行栽培から始めた有機栽培家なら誰でも知っているように、有機栽培への転換においては、農薬散布のためのスプレーや化学肥料を単に手放すだけではなく、変えるべきことがたくさんあります。農業コンサルタントの Christoffel Den Herder氏は、その課題を理解しています。「有機栽培を選択する生産者は、その他多数にはなりたくない起業家です。」と彼は話します。
有機栽培と聞いて、経験のない人が真っ先に思い浮かべるのは、化学農薬や化学肥料を使わない農業です。しかし、それは話のたった一部にすぎないと、農業コンサルタントのChristoffel Den Herder氏は話します。「有機栽培は、まったく異なる働き方を必要とします。化学製品を使用する場合は、問題が発生しても実際には後から修正することができます。有機栽培家は、もっとより予防的に行動しなければなりません。作物と土壌について、平均的な生産者以上の知識が必要です。作物の様子、根の深さ、土壌はどのように変化していくか、雑草や害虫に関して何が予測できるか、天候はどうなるか?」彼はこう結論付けます。「少なくとも 2 週間先を見据えて、あえてそれを基に栽培方針を決定する必要があります。」
Den Herder氏は、畑地での有機農業と畑野菜のアドバイザーとしての豊富な経験から語ります。以前はコンサルタント会社 Delphy に勤務していましたが、現在は Ceres Horti Advice という名前で独立しており、オランダおよび海外のクライアントを支援しています。実際には、農場の有機栽培への転換は、その最初の畑を当局に登録するとすぐに始まります。その時点までに、起業家は有機農業について長い間考えます、とDen Herder氏は言います。「第一に、家族や取引先と深く話し合う必要があります。また、早い段階で有機農業アドバイザー、卸業者、顧客を探し始めます。」
より長い輪作周期
有機農業へ転換後の大きな変化のひとつは、輪作サイクルを大幅に長くする必要があることです。慣行栽培の畑地農家は、5 年または 6 年サイクルで輪作する傾向があります。有機栽培では、少なくとも6年のサイクルを必要とします。Den Herder氏はさらにもう一歩踏み込みます。「私は、8年または10年サイクルを推奨します。その方が土壌伝染病の予防に適しています。6年でも問題はありませんが、その場合は、例えばニンジンと、あわせてパースニップやセロリアックなどの別のセリ科植物といったように、同じ科の複数の作物を育てます。そうすることで、12年間同じ作物を同じ場所で作らないようにします。」
作物の多様性が高いと、有機作物市場にもより適するようになります。その市場は、有機栽培に転換したての農家がかつて親しんでいた市場よりも動的な市場だとDen Herder氏は話します。「より多くの異なる顧客に対応し、多くの場合、より少ない数量で、より多くの配送を行うことになります。量的には少なく、より市場志向および顧客志向です。そのためには、これまでとは違った考え方が必要です。プロフェッショナルな生産者であるだけでなく、顧客が特定の農作物を急に必要とした場合のチャンスも見極めなければならないのです。」厳格な作付け計画は、変わりやすい市場の需要に適しません。しかし、良い作付け順序が重要なのも確かです。特に移行期には、Den Herder氏は、さまざまな要素を考慮して判断しています。
経済的に苦しい農家にとって、有機農業への転換は簡単な選択肢ではない、とDen Herder氏は警告します。「貧困を理由に有機栽培に切り替えようとしてはいけません。最初の 2 年間は、有機作物の高めの販売価格は設定できず、転換の費用のみが発生するため、始める時点で財政的に良好な状態でなければなりません。それに加えて、収穫量の変動、市場の需要の変化、従業員との連携などの側面に慣れる必要があります。一般的に、有機栽培を選択する生産者は、市場や社会が求めるものを供給するために、大口顧客の数ある取引先のうちのひとつになりたくない、卸業者に依存したくない、他の人と協力することにやりがいを感じる起業家たちなのです。」
作物の知識と品種固有のアドバイス
有機栽培の耕作農家や小規模農家たちは、慣行栽培を行っている農家よりも多くの作物を輪作計画に含めており、多くの場合、さまざまな品種を選択しています。 Bejo は、有機栽培に適した 35 を超える作物と 170 を超える品種を含む、幅広い種類の種子を提供しています。我々の専門家たちは、幅広い作物の知識とそれぞれの品種に関するアドバイスで有機栽培家の皆様をサポートします。
有機栽培を目指す?換金作物を控えること
有機栽培への転換は費用がかかります。EUでは、土地が有機栽培農場として登録されても、さらに2 年間は有機ロゴを付けて農産物を販売できません。このため、多くの生産者は、年に数か所の圃場を転換しながら、段階的に切り替えています。
「生産者はできるだけ早くたくさんの換金作物の栽培を始めようとする傾向があります」とDen Herder氏は話します。「それは必ずしも賢い選択とは言えません。ニンジン、チコリー、キャベツ、タマネギなどの作物は収益性が高いですが、リスクも伴います。コストが高く、多くの労力が必要です。その上、保管後、翌年の後半まで支払いが行われません。キャッシュフローが必要なので、換金作物と並行して、ほうれん草やインゲン、エンドウなどの収穫の速い契約作物を栽培することを検討することをお勧めします。そうすることで短期的にいくらかの収入が得られるでしょう。」
転換期は休閑作物が、新しい働き方に慣れるのに役立ちます。2年目には、転換畑の作物は「有機転換中」の条件を満たす作物になります。有機牛の育種家は、限られた量であればこの「有機転換中」の作物を飼料として使用することが許可されています。「そのように取引する方が、たいていの場合通常の市場で販売するよりも多くのお金を稼ぐことができます」と Den Herder氏は話します。「それはまた、堆肥を得るための接点を作る方法でもあります。」
よい経営者であることの重要性
労働力は最大の課題の 1 つです。十分に機械化された 80 ヘクタールの慣行栽培の農場であれば、1 人の男性または女性でも簡単に管理できます。有機栽培はより多くの労力を必要とします。 「60 ヘクタールまたは 70 ヘクタールでは、繁忙期に誰かを雇わなければならないことがよくあります」と Den Herder氏は話します。「タマネギのような集約的な作物の場合、1 ヘクタールあたり 100 時間、場合によっては 200 時間の外部労働力を考慮する必要があります。他の国では、300 時間または 400 時間の予算を組んでいる大規模な農場もあります。」
優秀な人材の確保は、多くの企業にとって問題になりつつあります。その為には、良い経営者になる必要があります。「優秀な人材にまた戻ってきてもらいたいなら、彼らに提供できる何かを持っていなければなりません。」 Den Herder氏は話します。「他の国では、畑だけでなく、小屋でも年間を通じて仕事を確保する農場が多くなっています。そうすることで、従業員が長く働き続けることができるのです。」